劇団四季の『クレイジー・フォー・ユー』という作品を観てきました。
現在は全国公演中で、2月13日の仙台公演を最後に閉幕が近づいています。
私は劇団四季の作品が大好きなのですが、中でもこの『クレイジー・フォー・ユー』はTOP3には絶対に入るほど。
私が劇団四季のミュージカルにハマったのは、中学1年生の時に観た「クレイジー・フォー・ユー」がきっかけ。
(その前小学生までは、劇団四季ではあるもののファミリーミュージカルを観ていました。)
当時、このミュージカルを観て、今までに感じたことのないような高揚感を覚えました。
きっと終演後にきらっきらな目で歩いていたのか、テレビ局のインタビューに捕まったくらい。(笑)
後ろ髪引かれる思いで会場を後にしようとしましたが、どうしてもと母にねだりCDを購入し、その後家で鬼リピートしました。(笑)
また上演してほしい願いも込め、劇団四季の『クレイジー・フォー・ユー』の良さ、魅力をお伝えしたいと思います。
【作品の魅力について】
1. 底抜けに明るくて楽しい、観たら幸せになれる
キャッチコピー「観るだけで、幸せになれる。」というのが前述の通りこの作品の魅力であり、作中もコメディ炸裂でめちゃくちゃ面白いです。
私がこの作品をミュージカル初心者におすすめしたい理由も、アメリカのとびっきり明るい文化を感じられる「ザ・ブロードウェイミュージカル」だからです。
ブロードウェイから曲も振りもセットもそのまま持って来つつも、日本語を存分に生かしてボケたりします。
何度練習したかわからないバツグンの「間」の取り方が何度も笑いを誘います。
ちなみに、本作はブロードウェイで1992年に「トニー賞 ベストミュージカル賞」を受賞していますが、1980年代からのブロードウェイはウエストエンド(ロンドン)の作品が多く上演され、トニー賞もロンドン作品に占拠され、久々の「ブロードウェイミュージカル」の受賞に沸いたのだとか。
ベラ・ザングラーのセリフ、「バリケードは片付けてくれ、どこかのミュージカルじゃあるまいし」は、オリジナルにもこのような台詞があったのかもしれませんね。
日本で初演されたのは翌年1993年ですが、バブルが弾け不況が始まった頃。
真剣に考えていると深刻になりがちですが、劇団四季の**「人生は素晴らしい、生きるに値する」**というメッセージが、「観るだけで明るくて幸せな気持ちになれる」というだけで、このミュージカルの存在価値があるのだと思います。
2. 曲(音楽、歌詞)
この作品で欠かすことができないのが、ガーシュウィン兄弟の音楽。
弟ジョージ・ガーシュウィン作曲した「I Got Rhythm」は絶対にどこかで聞いたことがあるはず。
のだめカンタービレのドラマのエンディング、「ラプソディー・イン・ブルー」の作曲者でもあります。
ピアニスト角野隼人が「クラシックを習ってもジャズを習っても必ずたどり着く、もはや唯一と言っていい存在」と寄稿する通り、ジャズやブルース等さまざまな音楽ジャンルが確立されていったアメリカを代表する作曲者です。
兄アイラ・ガーシュウィンは作詞を担当。原曲でも韻を踏んだ歌詞になっていますが、2019年に逝去された和田誠が付けた日本語歌詞も韻を踏んでいたり、オリジナルを大事にした歌詞になっています。
「I Got Rhythm」の歌詞、「Old Man Trouble」が「もめごと」だったり、 「But Not For Me」の「恋は枯木/まるで瓦礫/ロシア悲劇以上ね」など、名訳すぎます。
3. 演出、ダンス
振付を担当したのが、スーザン・ストローマン。
タップダンスはリズムの響きが心地よく、ガーシュウィンの音楽によく合っていて踊りたくなります。
素人を集め舞台を上演するとなった時も、ロープを使ったベースをイメージしたダンスになっていたり、シンプルな振り付けのはずが完成形になっていたり、気づいたら周りにあるモノを使って高揚感ある、迫力あるダンスシーンになっています。
舞台や作品を一から作り上げる楽しさを一緒になって体感しながら、気づいたら夢中になっています。
そして、なんといってもこの難しいダンスを踊りこなす俳優さん。激しいダンスなのに歌いもこなす、小道具も使いこなす、劇団四季のレベルの高さが伺える作品です。
タクシーから次々と踊り子さんが出てきたり消えて行ったり、ビール瓶をキャッチするシーン、ベランダから落ちもする西部劇のアクロバティックなシーン等、小物を使った演出だけでなく、俳優さんのパフォーマンスもすごいです。
舞台のあちこちでいろんなことをしているので目が追い付かず、また観たくなる舞台です。
4. 衣装
さらに注目したいのが、古き良きアメリカの衣装。
ザングラー・フォーリーズのガールズ(ダンサー)さんたちが着ているお洒落な衣装や、ポリーのワンピースが可愛いです。
主人公のボビーとポリーがダンスを通して恋に落ちていく様子を、スーザン・ストローマンが振付でも魅せてくれますが、ポリーがボビーと踊っていて気持ちが動く時、くるっと回転する振付とともに、ポリーが着る少し長めのワンピースがふわっと舞い上がります。 違うワンピースで3回ほどダンスシーンがあるのですが、このふわっとなるのが個人的にとても好き。(笑)
ラストシーンもショーの中の設定なのでしょうが、豪華なセットと衣装に包まれ、幸せな気持ち…夢見心地でうっとりします。
以下、今回観た公演のキャストさんです。
最後はスタンディングオベーションで、拍手が鳴りやみませんでした。
ほかにも俳優さんの表情、驚きや目に涙を溜めてぐっと悲しみをこらえるような、、 何度(何人)かある、「恋の女神が微笑む」瞬間の晴れやかな顔がとても素敵など(笑)
魅力はまだまだあるのですが、参考になれば幸いです。
クレイジーフォーユーは既にチケット完売でもうすぐ千秋楽を迎えてしまいますが、 ぜひ、他のミュージカル作品も楽しんでみてはいかがでしょうか。